【MSLって将来有望?そもそも何をしているの?】
転職を考える多くの薬剤師さんは「製薬メーカー業界で、MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)は将来有望な職種なの?」と大変疑問や興味を持っています。
以下、MSLというお仕事あれこれをまとめてみます。
【MSLというお仕事あれこれ】
(1)MSLとは?①定義と要件
日本製薬工業会では、「製品の販売活動を担当する職種から独立し、医学的・科学的に高度な専門性・学術知識を持ち、
社外・社内で医学的・科学的な面から製品の適正使用・製品価値の至適化などを推進する職種」と定義しています。※1
具体的には、MSLの活動は以下の要件を満たさなければなりません。
要件1)営業部門らかの独立を担保された組織に所属していること
要件2)自社医薬品の販売促進を目的にしないこと
要件3)患者中心の医療を促進するため、医療従事者への最新医学情報提供を目的とすること
※1:自主基準 メディカル・サイエンス・リエゾンの活動に関する基本的考え方 日本製薬工業会
②MR要件3)患者中心の医療を促進するため、医療従事者への最新医学情報提供を目的とすること
※1:自主基準 メディカル・サイエンス・リエゾンの活動に関する基本的考え方 日本製薬工業会
②MRMSLとよく混同されるのが、MR=医療情報提供者です。
医療従事者へ医療情報を提供することはどちらも同じなのですが、大きな違いが2つあります。
違い1)自社医薬品の販促活動が許されるか否か
MSLは自社製品の販売促進が許されません。対して、MRは自社医薬品の販売促進が活動目的です。
違い2)提供できる情報の違い
MSLは医学的・科学的な面において最新医学情報を提供する必要があるため、新薬の誕生から販売前の開発・承認申請段階の医薬品についての情報も提供できます。
患者中心の医療を促進するためには、高度な医学的・薬学的・科学的知識をもとに、疾患や薬物治療さらには最新の医学研究についても広く学んで、情報提供する必要があるからです。
対して、MRは自社の販促目標に合致した活動をするため、自社製品の情報提供が主となります。
欧米では50年以上前から活躍しているMSLですが、日本では2000年頃から外資系企業で登用されました。その後、2011年
臨床研究不正問題の影響もあり、業界全体にMSLのニーズが急増しました。
この問題を機に、製薬メーカー業界全体が自社製品の販促活動重視ではなく、患者中心の医療促進を目的として、
より高度な情報提供を行うMSLを増やす方針を取るようになったからです。
MSLが医療従事者へ高度な最新医学情報を提供することによって、結果として自社製品や自社の価値を高めていく戦略へと
変化したのです。そのため、ここ数年においてもMSLの数は増え続けています。
①役割
患者中心の医療促進を活動目的とするため、MSLには以下の役割があります。
役割1)治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ=アンメットメディカルニーズの把握
役割2)医療における製品使用の最適化を目的とした活動に関する計画=メディカルプランの作成
役割3)エビデンス(臨床研究の実証結果)の創出
役割4)医学・科学的情報の収集・発信・提供
これらの役割を果たすため、具体的には以下のような業務に努めています。
また、各業務のために資料作成や準備も必要となります。
・疾患領域の最新医学情報提供と情報収集
・医療業界で多方面に影響力を持つ医師との面談(出張も)
(対 学会・講演会関連)・学会への参加
・学会でのイベント企画・実施
・講演会の企画・実施
(対 社内関連部署)・メディカル戦略の策定
・疾患領域の最新医学情報提供と情報収集
・自社製品の臨床試験支援や論文作成
・グローバル関連の折衝やコミュニケーション
・学会聴講報告会・社外講師勉強会の実施
(4)MSLに必要なスキルMSLは、患者中心の医療促進を活動目的とするため、「医療業界で影響力のある医師や研究職へ、同時に社内関連部署にも
最新の医学情報収集・情報提供を行うことで、中立的な信頼関係を構築すること」が求められているといえます。
そのために必要なスキルとして、以下が挙げられます。
・コミュニケーション力(信頼関係を構築するため)・専門領域における豊富な知識(医療従事者と高度な情報交換が必要なため)
・英語力(最新の研究論文を解読し、医学情報を得るため)
また、現在は薬剤師資格保有者に加えて、医学博士や薬学博士を求める企業も多くなっています。
(5)MSLになるには?最近日本で増えて来た職種であるため、現役MSLの学歴や経歴も色々といえます。
①現役MSLの学歴や経歴・理系の修士又は博士号を取得している
・薬剤師・医師といった有資格者である
・海外や日本の研究機関で研究員をしていた
・製薬メーカーで研究職や臨床開発職をしていた
・同一疾患領域のMRをしていた
②採用に有利と考えられる経験高度な専門知識やコミュニケーション力が必要なため、未経験での採用はほとんどありません。
なお、プロトコル(治験実施計画書)の作成や臨床試験で得られたデータ分析等も要請されるため、研究開発や臨床試験に
関する知識や経験を積んでいると有利といえます。
また、MRからMSLへ転向するケースもありますが、研究に関連する学術的な活動をしていた等、高度な専門知識が十分に
あると認められなければ難しく、最近は減少傾向にあります。
MSLの役割の一つである「アンメットメディカルニーズ(Unmet Medical Needs)の把握」は、治療法が見つかっていない
疾患患者さんにとっての救いや利益につながり、社会貢献できる大きなやりがいといえます。
【MSLだけじゃない、製薬メーカーで活躍する薬剤師】
MSLでも薬剤師資格を持つ方が活躍されています。そして、薬剤師が活躍しているMR・CRA・薬事申請・PMS・研究開発職等についても、他ページでそれぞれのお仕事を
インタビュー&ご紹介いたします。