2021年8月施行の改正薬機法 2021年8月施行の改正薬機法

ここでは2021年8月施行の改正薬機法について詳しくご説明します。

薬機法改正の趣旨

2021年8月より調剤薬局の在り方が大きく変化します。薬機法が改正され、調剤薬局の在り方が大きく変わることになります。調剤薬局の在り方が大きく変わるということは薬剤師の働き方が大きく変わるということです。
趣旨は
「国民のニーズに応える優れた医薬品・医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するとともに、住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができる環境を整備するため、制度の見直しを行う」です。
引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の⼀部を改正する法律(令和元年法律第63号)

現場で働く薬剤師さんにとって、一番大きな改正概要はこちらです。
「住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し」
具体的には
(1) 薬剤師が、調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務 薬局薬剤師が、患者の薬剤の使用に関する情報を他医療提供施設の医師等に提供する努力義務
(2) 患者自身が自分に適した薬局を選択できるよう、機能別の薬局※の知事認定制度(名称独占)を導入
※①入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局(地域連携薬局)
②がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局(専門医療機関連携薬局)
(3) 服薬指導について、対面義務の例外として、一定のルールの下で、テレビ電話等による服薬指導を規定
引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等 の⼀部を改正する法律(令和元年法律第63号)

特に影響が大きいのが(2)です。
『患者自身が自分に適した薬局を選択できるよう、機能別の薬局制度を導入』です。具体的には地域連携薬局と専門医療機関連携薬局が新たに創設されます。実はこの2つ薬局機能は今回の薬機法改正で急に決まったことではありません。2015年に厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」で示された「かかりつけ薬剤師・薬局の機能」「高度薬学管理機能」に相当します。

2021年8月以降は
・地域連携薬局
・専門医療機関連携薬局
・それ以外
に区分されることになります。診療報酬は地域連携薬局・専門医療機関連携薬局>>>それ以外
となる為、新しく創設された区分の薬局薬剤師の給与が高くなると予想されます。

それぞれ、患者のプライバシーに配慮した設備などのハード面の違いはあれど、
そこで働く薬剤師に求められるソフト面も大きく変わり、薬剤師も今まで以上に幅広い知識が求められるようになります。

地域連携薬局で求められる薬剤師要件

・地域包括ケアシステムの構築に資する会議への参加
・ハイリスク薬等を服用する外来の利用者が地域連携薬局に来局した際に、利用者から服薬状況や副作用の発生の有無などの服薬情報を入手し、医療機関に勤務する医師、薬剤師等に提供すること。
・入院時には、医療機関において適切な薬学的管理を行うため、地域連携薬局が有する利用者の入院前の服薬情報等を、医療機関に勤務する医師、薬剤師等に提供すること。
退院時には、退院後に地域連携薬局が適切な薬学的管理を行うため、退院時カンファレンスに参加し、医療機関に勤務する医師、薬剤師等から入院時の服薬情報や退院後の療養上の留意点等について必要な指示・情報提供等を受けること。
・在宅医療を行う際には、主治医の指示等に基づいて地域連携薬局が居宅等において適切に薬学的管理を行うため、在宅における服薬状況等を適切に把握し、利用者の薬物療法等に必要となる薬剤や医療材料等の情報とともに、医療機関に勤務する医師、薬剤師等に提供すること。

これだけみても今まで以上に病薬連携が求められますね。

薬剤師の体制として、
・継続して1年以上常勤として勤務している薬剤師の体制が求められますので、大手の調剤チェーンでは異動がこれまで以上に抑制されることが予想されます。
・地域包括ケアシステムに関する研修を修了し常勤として勤務している薬剤師の体制も求められます。

これは健康サポート薬局に係る研修を修了した者が該当します。医療関係ニュースで〇〇調剤薬局が健康サポート薬局の認定取得とたびたびニュースになるのは、この地域連携薬局を念頭に置いてのことです。

専門医療機関連携薬局で求められる薬剤師要件

スタート当初は、“がん専門”のみですが、今後、糖尿病や高血圧、心臓病など他の疾患の専門薬局も視野に入れた改正となっております。専門的な医療の提供等を行う医療機関との間で開催される会議への参加が必須です。調剤薬局の中だけでなく、がん認定病院において行われる患者さんの治療方針を決めるカンファレンスに参加することが求められています。カンファレンスに参加となると物理的に病院と近くないと現実的ではないため、門前や門内薬局に限れてくることが予測されます。薬剤師は地域連携薬局と同じ常勤が求められる他、学会認定等の専門性が高い薬剤師の配置が求められます。当面は地域連携薬局よりも薬剤師の確保が難しいですが、がん認定資格を持つ薬剤師にとって大きなチャンスですね。
がんの専門薬剤師がいるだけでなく、
・薬事の関する実務に充実するすべての薬剤師に対するがんに係る専門的な研修の計画的な実施
・地域の他の薬局に対するがんに関する研修の定期的な実施
・地域の他の医療提供施設に対するがんに係る医薬品の適正使用に関する情報の提供実績
など専門的な実務が問われます。

地域連携薬局や専門医療機関連携薬局で働くには今以上のスキルが必要です。その分、診療報酬も高く、結果、働く薬剤師の給与も高いことが予想されるので、この機会にチャレンジしてみては如何でしょうか。

オンライン服薬指導が法令で可能に

もう一つ薬剤師の働き方に大きな影響を与えるのはオンライン服薬指導の導入です。オンライン服薬指導については2020年4月10発出の事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」にて既に行われておりますが、法令で認められるようになります。
詳しくはこちらをご参照ください。
改正医薬品医療機器等法(改正薬機法)留意事項について(薬局・薬剤師関係)

オンライン服薬指導が法令で認められるとどうなるのか?患者さんの“物理的制約がなくなります”。つまり門前薬局である必要が無くなります。今までの門前調剤薬局の勝ちパターンは、いかに病院の近くに薬局を建てるかでした。病院に近ければ近いほど、他の薬局よりも患者さんが来ます。門前薬局の差別化とは病院との距離でもあったのです。オンライン服薬指導が認められれば、診察終わって、一番近くの薬局であっても立ち寄る必要がまったくありません。具合が悪いから病院に行っていますので、病院が終わったら、家に帰ってオンライン服薬指導を受ければ良いです。この場合、薬局が門前である必要は全くなくなります。オンラインで服薬指導を受けて、薬は配送されて来ます。配送実験も様々な調剤薬局やドラッグストアで行われています。オンラインで服薬指導が増えるのならば、薬剤師も門前の薬局まで通勤する必要がなくなります。とは言え、物理的な薬の調剤を行う人は必要です。アメリカでは巨大な調剤工場のようなものが出来、機械がピッキングしたものを薬剤師がひたすら鑑査、発送に従事しています。恐らく日本も遠くない将来、調剤工場勤務薬剤師と服薬指導専門薬剤師が出てくると思われます。

まとめ

今回の薬機法改正に関して、ただ調剤をこなす薬剤師は市場から淘汰されてしまいます。社会保険診療報酬支払基金によると2021年1月診療分の診療報酬確定状況は調剤の確定件数は前年同月比16.4%減の2,672万件だそうです。処方箋枚数にすると昨年よりも1か月で約520万枚以上減少していることになります。院外処方率75%として、調剤の薬局稼働日数を25日計算、1日の処方箋処理枚数を33枚とすると約4,700人分の薬剤師の仕事が無くなっている状況にあります。

こんな中での改正ですので、スキルアップをしない薬剤師は生き残れなくなります。薬剤師図鑑では様々な薬剤師のキャリアを掲載中です。気になる薬剤師の方に今後どうなるか聞いてみては如何でしょうか。
もちろん弊社に直接ご相談頂いても構いません。頑張っていきましょう。